top of page
  • 執筆者の写真maizurunaika

中年女性に見られた肝機能障害

58歳 女性 体がとてもだるい、食欲がない、尿が濃いなどを訴えて来院された。 飲酒歴:アルコールは、缶ビール 1,2本/日、30年間。若い頃は多く飲んだことあり。 診察では、肝臓が腫れており、両足の浮腫がみられた。黄疸はない。 血液検査:総タンパク6.9 g/dl、アルブミン 3.0g/dl, AST(GOT)259,ALT(GPT) 32,γGTP(9-32) 1549,ALP(アルカリホスファターゼ)(106-322) 1047,総ビリルビン 1.3 血液検査で肝機能異常があり、特に胆管系酵素といわれるγGTP, ALPが著明に増加していた。アルコール性肝障害が疑われた。 しかし自己免疫性肝障害の可能性が否定できない為、抗ミトコンドリアM2抗体(正常値7未満)を測定したところ、148 と陽性だった。肝組織生検を施行し、原発性胆汁性胆管炎と診断された。 禁酒して、ウルソデオキシコール酸(ウルソ錠)の内服を開始したところ、6ヶ月後にはで肝機能はすべて正常(AST 20,ALT 16,γGTP 32,ALP 237)となり、腫大していた肝臓も正常の大きさになった。現在治療開始後8年経過しているが、肝機能はすべて正常で、日常的にはまったく問題なく元気に生活されている。


原発性胆汁胆管炎

この疾患は、以前は肝硬変まで進行して発見されることが多く、原発性胆汁性肝硬変と病名がついていた。しかし、超音波診断、血液生化学検査、血清学診断などで早期に見つかることが多く、肝硬変の状態にはなっていないことが多いことから、2年前より上記の病名に変更された。肝組織にある胆管細胞に炎症がおこるために、胆汁がうっ滞する疾患で、長期にわたると肝硬変になることもある。典型的な症状としては、黄疸、皮膚掻痒感が知られているが、ほとんど症状のないことも多く検診などでの健康診断で見つけられることも多い。50~60代の中年女性に見られることが多い。原因は不明だが、自己免疫性疾患とされていて、甲状腺疾患や、関節リウマチなど膠原病と合併することも多い。 検査では、肝機能異常とくにγGTP、アルカリフォスファターゼ(ALP)の著明な上昇が特徴である。そのほかAST,ALT、総ビリルビンが増加することもある。血清学検査で、抗ミトコンドリア抗体が陽性になることが特徴的である。 ウルソデオキシコール酸(ウルソ錠)が特効薬とされていて、内服開始して奏功することが多い。

閲覧数:1,337回0件のコメント

最新記事

すべて表示

放射線治療後の難治性出血性膀胱炎に対して、漢方薬が著効した症例

【症例】 65歳、男性 【病歴】 早期前立腺癌の治療目的で、放射線(重粒子線)照射療法を施行された。経過は良好であったが、治療2年半後に突然血尿がみられるようになった。総合病院の泌尿器科を紹介した。 【検査と経過】 肉眼的血尿がみられ、原因を精査したが、両腎、尿管、膀胱などに悪性腫瘍や結石などはなかった。前立腺癌の再発もなかった。膀胱鏡検査で、膀胱粘膜の一部だが毛細血管拡張、増生、出血の所見が見ら

頻回の下痢(20年間1日20回程度)、腹部膨満感が続く

45歳 男性   25歳のとき交通事故で腹部外傷。腹膜炎、腹腔内出血を来たし、緊急手術で右側結腸、小腸を約40cm切除された。その後頻回(1日20回前後)の下痢、腹部膨満感、肛門痛がずっと続いていた。各種医療機関を受診して、下痢の治療を試みられたが、一時的に改善がみられるだけでほとんど無効だった。大腸検査では以前施行された手術後の所見だけで、とくに異常はみられなかった。 これまでにつけられた病名は

bottom of page